GIS一般

GISとは何か?基本を分かりやすく解説します

近年、地図を活用したデータ分析や業務改善のニーズが高まっています。
その中で、「GIS(地理情報システム)」という言葉を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか?

GISは、単なる地図ではなく、位置情報をデータとして活用できるシステムです。
たとえば、建設業では工事の進捗管理、環境調査では森林の変化分析、防災では災害リスクの可視化など、さまざまな業界で利用されています。

「GISって何ができるの?」「普通の地図と何が違うの?」と疑問に思っている方もいるかもしれません。
本記事では、GISの基本概念を専門知識がなくてもわかるように解説します。

この記事を読むことで、以下のようなことが分かります。
✅GISとは何か?
✅GISを使うと何ができるのか?
✅どのような業界で活用されているのか?

GISの基本を理解し、業務への活用方法を考える第一歩として、ぜひ参考にしてください。

GISとは?

GIS(地理情報システム)とは何か?

GIS(Geographic Information System、地理情報システム)とは、位置を使って情報を管理・分析するシステムです。
たとえば、スマートフォンの地図アプリで「近くのコンビニを探す」とき、地図上に店舗の位置が表示されます。これも「地図に情報をのせる」というGISの考え方の一つです。
普通の紙の地図は、決められた情報が印刷されているだけですが、GISでは「どこに何があるか?」をデータとして記録し、検索や分析ができます。
つまり、GISを使うと、地図にさまざまな情報を組み合わせて、必要なデータを簡単に活用できるのです。

「位置情報を扱うデータベース」としての役割

GISは、地図上にデータを重ねて管理できるシステムです。
たとえば、「この場所には何があるのか?」を調べるとき、GISなら地図の情報と、それに関連するデータを一緒に扱うことができます。
普通の紙の地図は「場所」だけを示しますが、GISではその場所に「どんな情報があるか?」まで記録できます。
これにより、地図がデータベースとしての役割を持つようになります。

📌GISで管理できる情報の例

地理空間データ(位置情報)属性情報(付加データ)
建物の位置建物の名前や用途(例:学校、病院、店舗)
道路のルート道路の種類(例:国道、県道、市道)
河川や森林の範囲環境データ(例:気温、降水量、土地の標高)
市区町村の境界統計情報(例:面積、年齢別人口)

たとえば、「市内にある病院の場所と名前を一覧にする」「特定の道路の交通量を分析する」など、GISを使うと、地図上で情報を検索・分析できるようになります。
つまり、GISは「どこに何があるか?」を地図とデータを組み合わせて管理できる便利なツールです。

GISでできること

GISは、単なる地図の表示だけでなく、データを活用して分析や可視化を行うことができます。
ここでは、GISを使って具体的にどんなことができるのかを紹介します。

地図の作成(紙地図との違い)

GISを使うと、自分の目的に合わせた地図を自由に作成・編集することができます。
通常の紙の地図は決められた情報が印刷されているだけですが、GISでは必要な情報を追加したり、データを更新したりすることが可能です。
例えば、都市計画では「このエリアに新しい道路を作るとどうなるか?」、環境調査では「森林の変化を時系列で比較したい」というように、GISの地図はデータと組み合わせて活用できるのが特徴です。

📌紙の地図とGISの違い

比較項目紙の地図GISの地図
情報の追加・編集一度印刷すると変更できない必要な情報を自由に追加・更新できる
ズーム・拡大縮小固定サイズ(細かい部分が見にくい)地図を自由に拡大・縮小できる
属性情報の表示地図上の記号や凡例のみクリックすると施設名やデータが確認できる
検索機能なし(目視で確認)「〇〇エリアの病院」などの検索が可能
データ分析なし距離計測、エリア集計、傾向分析が可能
更新のしやすさ手作業で修正デジタルデータなので即座に更新可能
印刷・出力事前に決めたレイアウトのみ必要な範囲を選んで印刷・画像出力が可能

たとえば、以下のような用途でGISの地図作成が活用されています。
工事計画:道路や建物の設計図を重ね合わせて計画を立てる
防災対策:過去の洪水や地震の被害範囲を地図上で可視化する
環境調査:衛星画像やドローン撮影のデータを活用して、森林や水質の変化を分析する

このように、GISではデータを重ねたり、編集したりしながら「最新の情報に基づいた地図」を作ることができます。
つまり、GISを使うと、紙の地図ではできないカスタマイズや更新が簡単にできるのが特徴です。

距離や面積の計測

GISでは、地図上で距離や面積を簡単に測定できます。

距離計測の例
・「2つの建物間の距離」「河川の長さ」「道路の総延長」

面積計測の例
・「ある地域の森林面積」「指定エリアの土地面積」

たとえば、都市計画では「この公園の面積はどれくらいか?」、防災では「このエリアが浸水した場合、影響範囲はどのくらいか?」といった分析が可能です。
つまり、GISを使うと、距離や面積を即座に測定し、さまざまな業務に活用できます。

位置情報に基づく検索や分析

GISでは、地図上のデータを条件に応じて検索・分析することができます。

検索の例
・「この地域にある病院をすべて表示する」
・「特定の住所に近い店舗を探す」

分析の例
・「A市とB市の人口密度の違いを可視化する」
・「過去の気象データを元に、干ばつリスクが高い地域を分析する」

GISを使えば、単に地図を見るだけでなく、条件を設定して必要な情報を素早く見つけることができます。
つまり、GISを活用すると、データを地図上で検索・分析し、業務の意思決定に役立てることができます。

経路検索や空間統計

GISを活用すると、最適なルートの検索や、空間データを使った統計分析が可能になります。

経路検索の例
・「最短ルートで配送ルートを決定する」
・「渋滞を避けた経路を計算する」

空間統計の例
・「特定エリアの人口分布を可視化する」
・「事故の発生地点を分析して、リスクの高いエリアを特定する」

たとえば、物流業界では配送ルートの最適化、自治体では犯罪の発生傾向の分析などに利用されています。
つまり、GISを使うと、ルート検索やデータ分析を活用して、業務の効率化や改善が可能になります。

シミュレーション(災害予測や都市計画)

GISは、「もし〇〇だったら?」というシミュレーションを行うのにも役立ちます。

災害予測の例
・「豪雨による洪水が発生した場合の影響範囲をシミュレーションする」
・「地震が発生した際の避難ルートを可視化する」

都市計画の例
・「新しい道路を作ると交通量はどう変化するか?」
・「高齢者人口の増加を考慮した施設配置の計画」

このように、GISは将来のシナリオをデータに基づいて分析し、より良い計画を立てるために活用されています。
つまり、GISを活用すると、未来の変化を予測し、最適な計画を立てることが可能になります。

ここまで紹介したように、GISを使うと単なる地図ではできないデータの可視化や分析、シミュレーションが可能になります。

GISの活用分野

GISは、さまざまな業界で活用されており、業務の効率化や意思決定の支援に役立っています。

行政(都市計画、インフラ管理)

自治体や政府機関では、GISを活用して都市計画やインフラ管理を効率化しています。

都市計画の例
市街地の開発計画:人口増加に応じた道路や公園の配置を計画
交通網の最適化:渋滞状況や公共交通の利用状況を分析

インフラ管理の例
道路や橋梁の維持管理:老朽化したインフラの位置を把握し、優先的に修繕
上下水道や電力ネットワークの管理:配管や送電網の地図データを管理

つまり、GISを活用すると、都市の発展やインフラの維持管理をデータに基づいて計画することができます。

建設業(工事計画、用地調査)

建設業界では、GISを使って工事計画の立案や用地調査をスムーズに行うことができます。

工事計画の例
建設現場の地形分析:傾斜や土壌の特性を考慮した施工計画
施工エリアの管理:施工済みエリアや進捗状況を可視化

用地調査の例
土地の境界確認:不動産登記情報とGISデータを照合して、用地取得の計画を立案
環境影響評価:工事が周辺環境に与える影響を分析

つまり、GISを活用すると、建設工事の計画や用地の選定をデータに基づいて行うことができます。

環境調査(森林管理、生態系調査)

環境分野では、GISを活用することで自然環境の変化を可視化し、適切な管理や保護を行うことができます。

森林管理の例
森林の分布や伐採状況の把握:過去の航空写真や衛星画像と比較し、森林の変化を分析
生態系保全計画の立案:貴重種の生息地を特定し、保護エリアを設定

水域・生態系調査の例
水質や生物分布の分析:水域の汚染状況を可視化し、対策を検討
災害による環境変化のモニタリング:土砂崩れや洪水の影響を分析

つまり、GISを活用すると、環境変化をデータで把握し、継続的な管理が可能になります。

物流・交通(ルート最適化)

物流業界や交通分野では、GISを使って配送ルートの最適化や交通網の管理を効率化しています。

物流・配送の例
最適な配送ルートの計算:渋滞や交通規制を考慮し、配送時間を短縮
配送エリアの分析:需要の高いエリアを特定し、効率的な配送計画を立案

交通管理の例
公共交通の運行計画:バスや電車の利用状況を分析し、新しい路線や時刻表を設定
渋滞・交通事故の分析:事故多発地点を特定し、安全対策を強化

つまり、GISを活用すると、物流や交通の効率化を図り、コスト削減や安全性向上に貢献できます。

防災(避難経路の分析、ハザードマップ作成)

防災の分野では、GISを使って災害リスクを予測し、住民の安全対策を強化することができます。

災害対策の例
ハザードマップの作成:洪水、土砂災害、地震のリスクエリアを可視化
避難ルートの最適化:避難所までの経路をGISでシミュレーション

緊急対応の例
被災状況のリアルタイム把握:被害地域のデータを収集し、救助活動を迅速化
防災計画の立案:過去の災害データを基に、避難計画を策定

つまり、GISを活用すると、災害発生前の予防策や発生後の迅速な対応が可能になります。

このように、GISはさまざまな業界で活用され、業務の効率化やリスク管理に貢献しています。

GISを使うには?

ここまで、GISの基本的な概念や活用分野について紹介してきました。
では、実際にGISを使うにはどうすればよいのでしょうか?
GISを活用するためにはGISソフトウェアが必要です。GISソフトには商用のものとオープンソースのものがあり、それぞれに特徴があります。
ここでは、代表的なGISソフトウェアと、それらの違いについて解説します。

GISソフトウェアの種類

GISソフトウェアは 「商用GIS」と「オープンソースGIS」 の 2つのタイプ に分かれます。

種類特徴代表的なソフトウェア
商用GIS(有料)高機能で、使いやすさやサポートが充実しているが、ライセンス費用がかかるArcGISなど
オープンソースGIS(無料)無料で使え、機能も商用GISと同等だが、公式のサポートは限定的QGIS、GRASS GISなど

商用GIS は、使いやすさやサポート体制が整っており、GISの専門知識がない人でも操作しやすい設計 になっています。
ただし、ライセンス費用が必要なため、長期的に使う場合はコストがかかる 点に注意が必要です。

一方で、オープンソースGIS無料で使える GISソフトウェアです。
「無料」と聞くと機能が限られているように思われがちですが、実際には 商用GISと同等の機能を備えており、データ編集・分析・マップ作成など幅広い用途に対応 できます。
ただし、公式のサポートがないため、トラブル時はオンラインの情報やコミュニティを活用して解決する必要がある という点に注意が必要です。

つまり、商用GISは「手厚いサポートと直感的な操作性」が強み、オープンソースGISは「コストをかけずに高機能なGISを使える」のが強みです。

代表的なGISソフトウェア

ArcGIS(商用)
・Esri社が開発する世界的に最も普及しているGISソフト
・わかりやすい操作性と強力な分析機能が特徴
・有料ライセンスが必要で、年間の維持費も発生

QGIS(オープンソース)
・無料で利用できる高機能なGISソフト
・商用GISに匹敵する多くの機能を持ち、プラグインで拡張も可能
・コミュニティが活発で、使い方に関する情報も豊富
・環境解析や地理空間データの処理に特化したGISソフト(**GRASS GISなど)**とも連携できる

このように、GISソフトウェアには用途やコストに応じた選択肢があります。
つまり、「どのGISソフトを選ぶか?」は、コスト・機能・サポートのバランスを考えることが重要です。

QGISの特徴

QGISは、 無料で使えるオープンソースGIS でありながら、高度な機能を備えたソフトウェアです。
商用GISと同等の機能を持ち、データの作成や分析、可視化など幅広い用途に対応しています。

QGISの主な特徴
無料で利用可能(商用GISのようなライセンス費用なし)
多くのデータ形式に対応(シェープファイル、GeoJSON、PostGIS など)
豊富な分析機能(空間統計、ルート検索、ラスタ解析 など)
プラグインによる拡張が可能(必要に応じてカスタマイズできる)

特に プラグインを活用すると、業務に合わせた機能を追加できる のがQGISの大きな強みです。
例えば、「操作をもっと簡単にしたい」「特定の業務に特化した機能が欲しい」という場合、 独自のプラグインを開発することで、QGISをより使いやすくカスタマイズ できます。
また、QGISは 世界中のユーザーによる情報共有が活発なソフトウェア ですが、 「何から始めればいいかわからない」「専門的な設定が必要で困っている」 という場合もあるかもしれません。

弊社では、 QGISの導入支援やプラグイン開発などのサポートを行っています
QGISの活用を検討している方は、ぜひご相談ください。

このようにQGISは無料で利用できる上に機能が充実しており、「コストを抑えつつGISを導入したい」 という企業や自治体にとって、QGISは非常に有力な選択肢となります。

まとめ

この記事では、GIS(地理情報システム)とは何か?について基本的な概念を解説しました。

重要なポイントは以下の通りです。
✅GISとは、位置情報をデータとして管理・分析できるシステムである。
✅一般的な地図と異なり、データの検索・分析・更新が可能。
✅都市計画、建設業、環境調査、物流・交通、防災など、さまざまな業界で活用されている。
✅GISを使うには、商用GIS(ArcGISなど)またはオープンソースGIS(QGISなど)のソフトウェアを選ぶ必要がある。
✅QGISは無料で使える高機能なGISソフトで、多くの企業や自治体でも活用されている。

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